2025年06月01日
脳神経内科が語る認知症コラム その5ーどうやって診断するの?ー
(5) どうやって診断する?
<まず認知症であるのか?>
“加齢による生理的な認知機能低下”と”認知症”と全く異なります。”加齢による生理的な認知機能低下”は髪の毛が白くなったり、皮膚にシミができたりといった生理的なもので心配はないですし、気をつけて脳トレなどをすることである程度進行はしないように努力できます。一方、”認知症”は疾患ですので進行性に認知機能低下が進みます。”脳神経内科が語る認知症コラム その1-4″でお話ししたように中核症状=物忘れ、及び、周辺症状=BPSD=幻覚や易怒性(怒りやすさ), 無気力さ、などの症状を早期に気づき治療介入することが認知機能低下の進行を遅らせることができるので重要になります。
ではどうやって診断するのでしょうか。
まず、上記の”加齢による生理的な認知機能低下”か、”認知症”なのか、を区別しましょう。
私たち脳神経内科では、いくつかの検査を組み合わせて診断精度を上昇させます。よく使うバッテリーとしては(1) 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R), (2) Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J), (3) ミニメンタルステート検査(MMSE), (4) 前頭葉機能検査 (FAB)などがあります。それぞれ、”何点以下なら異常”といったように基準が定められており、この一定の点数以下であると認知症の可能性を考慮します。
<認知症であるなら何の認知症なのか?>
(1) 脳神経内科医による診察の重要性
上記の検査で点数が一定以下、あるいは、認知機能検査では障害されている認知機能、つまり、物覚えが悪くなっているのか、計算ができなくなっているのか、料理などの複数のプロセスを同時に処理する機能が落ちているのか、、、などを見ることができますが、ある一定の能力のみ特異的に落ちすぎていたりすると認知症としてさらに精査が必要になります。”認知症であるなら何の認知症なのか?”ということですね。これは認知症と言ってもいくつか種類があり、そのタイプによって治療薬が異なるからです。認知症と診断されたら、”何の”認知症であるのかを厳密に追求する必要があります。
さて、ここからは脳神経内科医の最も得意とする本分です。
認知症を示す疾患は数多くある中で、パーキンソン症候群(パーキンソン病や進行性核上性麻痺など)、正常圧水頭症などはその症状が多彩であり、やはり脳神経分野に精通していないと、中々診断ができないのが現状です。
ゴミ箱診断的にアルツハイマー型認知症とされてしまうことが多い気がします。
この段階からの診断は必ず脳神経内科医の診察を一度でも受けることをお勧めします。
(2) 頭部MRIや脳血流シンチグラフィーによる診断補助
診察のほかに現代では強力なバックアップ技術があります。
頭部MRIや脳血流シンチグラフィーです。MRIでは”脳の形”を見ます。脳が萎縮していないかな、萎縮しているならどこが目立つかな、ということです。例えば前頭葉の萎縮が目立つ場合は前頭側頭型認知症、海馬の萎縮が目立つ場合はアルツハイマー型認知症、左右の脳の萎縮に差がある場合は大脳皮質基底核変性症などが考えられます。
脳血流シンチグラフィーでは”脳の機能”を見ます。血流が落ちていると、脳の機能が悪いな、と考えられるわけです。例えば頭の後ろの方、後頭葉の血流が悪いと、パーキンソン病、レビー小体型認知症かな、と考えるわけです。
しかし、ご高齢の方では頭部MRIで脳の萎縮は程度の差はあれ必ずありますし、脳血流も落ちていることが多いです。あくまで、患者様の症状、認知機能検査、脳神経内科医による診察の上で、”診断のサポート”としての意義があります。
いかがでしたか。
認知症の診断は複雑です。脳神経内科分野の特異的な疾患が紛れていることが少なくありません。ゴミ箱診断的にアルツハイマー型認知症とされてしまうことは避けなければなりません。
key wordは”どこまでも患者様のために”。